本稿では、元々曲線を の形のものと仮定しているが、
これは
に関して一意には
が決まらない左右に振れる解や、
軸方向 (半径方向) に進む道を表しえない。
すなわち、そういった道を解として認めていないことになる。
左右に振れる曲線路では最速にはならないことは容易に想像がつくが、
半径方向の道は必ずしも遅くはなく、実際 の場合には
そのようなものが最速を与えている。
本節では、そのような道を含むような解を考えてみる。
例えば、A からある半径 (
) の位置 C までは井戸のように
真下 (中心方向) に進み、
その C、極座標で言えば
から D:
までは今までの最速線のようなトンネルを通り、
D から B まではまた真上 (中心の逆方向) に井戸を上がる、
といった解が考えられる。
それによる到達時間
を考えてみる (図 8)。
実は、この中間部は、C での初速度が 0 ではないため、
前の解の を単に
にしたものにはならない。
よって、まずそこから考え直す。
2 節の問題 (半径 ) の初速度を 0 から
(
) に変えた問題を考える。
その場合、2 節の計算では (5) の式が
また、 として (
)
その に対し、
さて、井戸を含む解の問題に戻る。
この場合、 での初速度
は、
エネルギー保存則 (4) により、
は、
となる
に対し
と
すると、
C から D までにかかる時間
は、(59) により、
は
によって変化するが、当然
のとき、
となる。
ただし、 それを式の上でちゃんと示すには、(58) の
ような変数変換と定理 2 が必要になる (証明は省略)。
さて、この を
と比較するのであるが、
そのために
を
の関数
と考えて、
それが
の減少関数であることを示す。
もしそれが言えれば、
まず、(41) の の積分範囲の
上端を
にしたものを
と
の関数と考えて
とする。
(62) の も、
が含まれているので、
正確には
にも依存する関数になる。
はこの意味では
これで、
となるので、
(64) の
の
以外のパラメータは
すべて
の 1 変数関数として表すことができ、
と見ることができるようになる (
)。(65), (68) より、
それは以下のように書ける。
この式を で微分すると、(66), (67), (68) により、
なお、この を与える解は、厳密に言えば、連続ではあるが
滑らかな解にはなっていない。
(61) より、
そうすると、A から井戸に落した玉は、C のところで壁に衝突し、 C での速さ (60) はそのまま C から D への曲線の初速度には ならないし、D の場所でも壁にぶつかり速度が多少減ってしまう。 C, D の角を少し丸めてそこで速度が減衰しないようにすることは可能かも しれないが、そうすると今度はその丸めた短い部分が厳密には上の 最速曲線の状況とは変わってしまう。
よって厳密にはこの を与える通路は時間
を与えないのだが、
角を丸めたもののその丸め部分を小さくした極限とみなせば
を考えること自体に意味がないわけでもない。
ちなみに、そのような極限的な少し変な解は、変分問題ではよく現れる。
竹野茂治@新潟工科大学