7 回数毎の確率
5 節で、
の平均を計算したが、
実際にその平均付近の確率が高いのかどうかはそれだけではわからない。
よって、本節では、各回数毎の確率、すなわち
となる確率
を考える。
では
なので、
となる。
よって以後は
とする。なお、
の
は、
1 以上のすべての整数を取ることに注意する。
まず、
については、
に対して
(17)
となる。次に
に対しては、
であり、これを前のように
で分けて考える。
に注意すると
より、
(18)
という漸化式が得られる。この漸化式は、
左辺が
の
に関する 2 項漸化式になっていて、
よって右辺の
の
を表す
の式があれば、
この式から
の
の式が得られる、という形になっている。
例えば、
とすると、(18) は
となるので、
は公比
の等比数列で、
(17) より初項は
、
よって
(19)
となる。
とすると、(18) は
より、
という漸化式が得られる。両辺
倍すると、
となるので、
は公差 2 の等差数列で、
初項は (17) より
、よって
より
(20)
となる。
このような作業を続けていくことができるが、
結果として、大まかには次のような式になることを示すことができる。
(21)
なお、右辺の最初のシグマの部分は
に対しては 0 とみなす。
実際、(19), (20) より
に対しては
で、
に対しては
となっている。
に対しても (21) の形が成立することを
帰納法で示そう。まず、
では成立しているので、
までは (21) が成立するとして、
の場合に成立することを示す (
)。
(18) の右辺の
に対しては
帰納法の仮定により (21) の形になるので、
それらを代入すれば、
(22)
の形になる。ただし、右辺のシグマの部分は
の場合には 0 と見なし、
また、簡単のため
とした。
(22) の両辺を
で割ると
(23)
となる。ここで、
に対して
なので、この差は
のときのみ 0 であとは正となるから、
となる。
よって、(23) の右辺の
乗の項の底は (
も含め) いずれも 1 より
小さく、(23) の式を
から
まで和を取れば、
右辺は最後の項を除いては等比数列の和で、
最後の項の和も
の 1 次式倍と定数との和になるから、
の形となる。よって、この式を
倍すれば
が得られ、
これで (21) が
に対しても成り立つことが示された。
さて、
の平均
は、本節の
を用いて、
と書くこともできる。そして、
は (21) の
ように
に関しては 1 より小さい公比のいくつかの等比数列、
および
という数列の定数倍の和の形になっている。
よって、その
倍の
に関する和は、
無限大にはならず有限値に収束することが容易に示される。
これが、5 節の (16) の式の導出で
保留した
の有限性の証明になる。
(21) の式の係数
を
決定すれば
を式で表現できることになる。
それはもちろん容易ではないが、それらに成り立つ漸化式なら作ることができる。
それは、上の説明の文字の置き換えを丁寧にたどって作ることも
できなくはないが、
むしろ (21) を漸化式 (18) に代入して、
各等比数列の係数を比較する方が楽だろう。
漸化式に代入すると、
となり、
の
、および 1/3 はいずれも異なるから、
それらの
乗は数列として線形独立になり、よって両辺の係数を比較して、
が得られ、そして代入で消えてしまった
は、
(21) の
の式と (17) により、
となるので、(24), (25), (26) によって
(
),
,
が求まった後で
(27)
によって求まることになる。
なお、
は (25) により単独で
計算できるが、
の (26) による計算には
が必要で、
は、(26) は
前の
に対する
があれば求まる形ではあるが、
(27) の
に
すべての
(
) と
,
が必要となる。
いくつかの
(
) の計算をしてみる。
は、
等なので、
より、
は
等。
は
,
より、
最後に
を求める。
の場合、
(27) より、
の場合は、
の場合は、途中の計算を省略すると、
これも、
の
の計算と、
それぞれの検算には Maxima を利用した。
ただし、途中の計算 (私の手計算部分) が間違えている可能性はある。
最後に、
のときの
、すなわち
となる
確率を数値計算してグラフ化したものを図 1 に示す。
図 1:
のグラフ (
)
|
これを見ると、
の線が 5 節で求めた
平均値 (24.350) であるが、その辺りに確率値のピークがある形ではなく、
実際には確率が一番大きいのは
のとき (
) であることがわかる。
つまり、回数の期待値は 24.35 なのだが、
最も起こりやすい回数は 9 回で、その付近の確率が一番大きくなっている、
ということになる。
竹野茂治@新潟工科大学
2025-09-08