3 基本周期が存在しない関数

周期関数 $f(x)$ の基本周期は以下のように定義した。
定義 6

周期関数 $f(x)$ の正の周期のうち最小値 $T_0(>0)$ が存在する場合、 それを $f(x)$基本周期と呼び、 $\mathop{\rm Per}(f)=T_0$ と書く。

この「存在する」とは、「正の周期のうちの最小値」の存在のことを 指している。 例えば $f(x)=\sin x$ であれば、 正の周期は $2\pi,4\pi,6\pi,\ldots$ なので、最小値は $2\pi$ となる。

逆にその最小値が存在しない状態とは、 正だがいくらでも小さい周期が存在する、という状態を指す。 そのような例は、区分的連続関数の範疇には存在しないが、 区分的連続性を除いた定義 2 の元では、 正のいくらでも小さい周期を持つ関数を作ることができる。


このように一般の不連続関数まで許せば、 定義 2 の元では基本周期が存在しない関数が作れるが、 一方で区分的連続性を課した定義 1 の元では、 このようなことは起きないことが示される。

命題 3.1

証明

$f(x)$ が区分的に連続で、 $T_1>T_2>T_3>\ldots$$f(x)$ の周期であり、 $\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}{T}_n=0$ とする。

$f(x)$ の連続点 $a,b$ ($a<b$) を任意に取る。 $(b-a)/T_n$ の整数部分を $m_n$、小数部分を $p_n$ とする ($0\leq p_n<1$)。 このとき $b-a=m_nT_n+p_nT_n$ で、$T_n$$f(x)$ の周期だから

$\displaystyle f(b) = f(a+m_nT_n+p_nT_n) = f(a+p_nT_n)
$
となる。ここで、$0\leq p_n<1$ より $0\leq p_nT_n<T_n$ だから $\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}{p}_nT_n = 0$ となり、$f(x)$$a$ で連続なので、
$\displaystyle f(b) = f(a+p_nT_n) \rightarrow f(a)
$
となる。よって $f(b)=f(a)$ が成り立ち、 $f(x)$ は連続点ですべて同じ値を取ることになり、 よって、離散的な点を除いて $f(x)$ は定数となる。


なお、この証明では、$f(x+T)=f(x)$ の成立をすべての $x$ で、と見たが、 定義 4, 定義 5 のように $f(x)$ の連続点でのみ成立する、としても同じことが示される。 それは、上の証明の

$\displaystyle f(a+m_nT_n+p_nT_n) = f(a+p_nT_n)
$
の箇所で、 $b=a+m_nT_n+p_nT_n$$f(x)$ の連続点であり、 よって、$a+p_nT_n$$f(x)$ の連続点でないような $n$ を除外して 考えればよいからである。それにより除外されない $n$ が無限個存在する 必要があるが、 $B=\{a+p_nT_n\}$ とすると よって、定義 4, 定義 5 の元でも 命題 3.1 が成立することがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2025-05-29