3 極の定義

次は極の定義を振り返る。

極 (極大、極小) の定義も複数あり、今回調べたところ、高校流の定義、 狭義の極大、広義の極大の別と、さらに内点であることを要請しているか どうかで、色々な定義があることがわかった。 また、「極大」という言葉も、本によって「極大である」という言い方と 「極大になる」という言い方がある。

多分「である」は状態そのものを指し、「になる」はその状態に変化することを 指しているのだと思うが、よって前者は「$x=a$ では極大という状態である」 という言い方で、後者は「$x$ の値を変化させていくと、$x=a$ 以外では 極大ではないが、$x=a$ のところで極大という状態になる」ということを 述べているのだろう。

以下は、いずれも「$x=a$$f(x)$極大である」ということの 定義。

定義 3.1

  1. 「高校流の極大」: $x=a$$D$ の内点で、$a$ を境に $f(x)$ が 増加から減少に変わるとき。
  2. 「広義の極大(内点)」: $a$ を含むある開区間 $I\subset D$ があり、 任意の $x\in I$ に対して $f(a)\geq f(x)$ となるとき。
  3. 「狭義の極大(内点)」: $a$ を含むある開区間 $I\subset D$ があり、 $x\neq a$ である任意の $x\in I$ に対して $f(a)>f(x)$ となるとき。
  4. 「広義の極大」: $a$ を含むある区間 $I\subset D$ があり、 任意の $x\in I$ に対して $f(a)\geq f(x)$ となるとき。 ($a$$D$ の境界点でも構わない)
  5. 「狭義の極大」: $a$ を含むある区間 $I\subset D$ があり、 $x\neq a$ である任意の $x\in I$ に対して $f(a)>f(x)$ となるとき。 ($a$$D$ の境界点でも構わない)
「内点」とつけた方は $a$$D$ 内のある開区間に含まれる必要があり、 すなわち $a$ の左右両側で $f(x)$ が定義されている必要があるが、 「内点」とつけない方は「開区間」とは断わっていないので、 $a$ が定義域の境界 (端点) でも構わず、$a$ の左側、あるいは右側では $f$ が定義されていない場合もありうる。

内点の条件がある定義の場合は、$f(x)$ が微分可能ならば 極大では $f'(a)=0$ となるが、内点の条件がない場合は、 端点では $f'(a)=0$ とは限らない (そもそも端点では通常は微分係数は定義されない)。 だから、内点の条件がない場合は、「$x=a$ で極ならば $f'(a)=0$」という 定理は、端点以外では、のように条件をつける必要があることになる。

また、「広義の極大」と「狭義の極大」は、 定数関数の場合はすべての $a$ で広義の極大となるが、 狭義の極大とはならない、という違いがある。

この極の定義の状況についても調べてみた。

  1. 「高校流の極大」を採用: [4], [13],[14],[15]
  2. 「広義の極大(内点)」を採用: [9],[12]
  3. 「狭義の極大(内点)」を採用: [3],[6],[11]
  4. 内点とは明確に述べていないが「狭義の極大(内点)」を採用: [1],[5]
  5. 「広義の極大」を採用: [8],[10]
  6. 「極大」ということばは「広義の極大(内点)」を採用し、 その上で「狭義の極大(内点)」も「狭義の極大」として定義している: [2]
なお、[1] は一見内点に関する条件が定義には明確に 書かれてはいないが、「微分可能ならば極では $f'(a)=0$」と述べているので、 内点であることも暗黙に含まれているようである。

また、[5] は 1 変数関数の極の定義はないが、 2 変数関数の極の定義が「狭義の極大(内点)」を採用している。

[6] は、$a\neq x$ の条件を書いていないが、 不等式に等号をつけていないので、 多分「狭義の極大(内点)」の意味だろうと思われる。

翻訳本の 2 冊 ([8],[10]) がともに 内点を条件としない「広義の極大」を採用しているのがやや 興味深い。もしかすると海外ではこちらがスタンダードで、 日本とは状況がやや違うのかもしれない。

高校流の極大の定義は、最近の教科書だけかと思ったが、 少し古い高校の教科書でも同様だった。

竹野茂治@新潟工科大学
2025-11-12