2 増加・減少の定義

まずは「増加」「減少」の用語について少し振り返る。 実は、この用語にはいくつかの用法があり、本によって若干意味が異なる。

今回、我々が使用している教科書 [1] のほかに、手元にあった いくつかの大学初年度向けの微積分の本 [2],[3], [4],[5],[6],[7], [9],[10],[11],[12]、 および高校の教科書 [13],[14],[15] を 調べてみた。

「増加」には、いわゆる「狭義単調増加」と「広義単調増加」の 2 種類が あり、それぞれ以下のようになる。 なお、$f(x)$$D$ で定義された関数とする。

定義 2.1

  1. $f(x)$$A\subset D$狭義単調増加で あるとは、$a,b\in A$, $a<b$ なる任意の $a,b$ に対し、$f(a)<f(b)$ となること。
  2. $f(x)$$A\subset D$広義単調増加で あるとは、$a,b\in A$, $a<b$ なる任意の $a,b$ に対し、$f(a)\leq f(b)$ と なること。
「狭義」と「広義」の違いは、定義の最後の不等式の部分に等号がないか あるかだけであるが、これにより例えば定数関数は狭義単調増加ではないが、 広義単調増加であることになる。

「狭義単調増加である」は「狭義単調増加する」と動詞形で書いたり、 「狭義単調増加関数」と名詞形で書くこともある。 また、「狭義」や「広義」をつけずに表現されることも多いが、 その場合「単調増加」とするか「増加」とするかも色々流儀がある。 中には「単調増加」と「増加」で意味を変えて使い分ける場合もあった ように記憶している。

さて、上記の本でこれらの用法を調べてみると、以下のようであった。

  1. 広義単調増加・減少は扱っておらず、狭義単調増加・減少のみで、 それらを「増加・減少」と呼んでいる: [1], [6], [14]
  2. 広義単調増加・減少は扱っておらず、狭義単調増加・減少のみで、 それらを「単調増加・単調減少」と呼んでいる: [9],[3]
  3. 狭義単調増加を「狭義単調増加」、広義単調増加を単に「単調増加」 と呼んでいる: [2],[7]
  4. 狭義単調増加を「増加」、広義単調増加を単に「広義の増加」 と呼んでいる: [12]
  5. 狭義単調増加を「増加」、広義単調増加を「非減少」 と呼んでいる: [10]
  6. 狭義単調増加を「増加」、広義単調増加を「単調増加」 と呼んでいる: なし
  7. 明確な定義はない (日常語としての「増加・減少」で済ませている ?): [4],[5], [11], [13], [15]
なお、[7] は翻訳本のためか若干用語が違っていて、 正確には「増加」は「増大」、「減少」は「減小」と訳している。

「単調増加」と「増加」を使い分けている本は、今回調べた本の中には なかったが、ネットではそのような声も上がっていた。

竹野茂治@新潟工科大学
2025-11-12