まず、行列式の定義を紹介するが、 行列式の定義は、置換群を用いて紹介する流儀もある。 しかし、本稿では線形代数の教科書 [2] に 書かれている定義や用語にできるだけ従うため、 (置換と 1 対 1 に対応するのであるが) 順列 を用いて行列式の定義を行うことにする。
次の正方行列
に対して、その行列式は、
次のように定義される:
(3)
これらにより、この (3) は、
の要素のうちすべてが異なる行、異なる列に入る
個の要素を取り出し、
その積
一方、良く知られているように
(4)
(5)
もちろん本来は、順列の 逆対応
:
(6)
この節では、まずこの行列式を生成するための順列について考察し、 2,3 の補題を示すことにする。
まず、順列のうち、
とは異なる部分を挙げたものを
また、順列を一つずつ順送りにしたものを 巡回順列 と呼ぶ。
例えば、以下の順列は の巡回順列である。
(7)
順列 ,
に対して、その合成による順列
この積は、置換の考え方で理解することもできる1。
この例の ,
は
,
であり、
は、
をまず
に従って 2 番目と 3 番目を入れかえて
とし、
次に
に従ってその順列の 1 番目と 2 番目を入れかえて
としたものに等しい。
この順列の積について、容易に次が示される。
証明
の場合を考えれば、
のすべての順列は、巡回順列の
個の積
(11)
証明
以後、(11) の積の式を
と書くことにする。
この
は、
が 0,1 の 2 通り、
が 0,1,2 の 3 通り、そして最後に
が
通りなので、
結局 (11) は
通りあるから、
異なる
に対しては
異なる順列
が得られるのであれば、
これですべての
の元が一意に得られることになる。
よって、
ならば
であることを示せばよい。
前に見たように、
は
を
に従って最後の 2 つの数字を巡回し、
次にそれを
に従って最後の 3 つの数字を巡回し、
という形で並び変えていき、
最後に
に従って
個全部を巡回したもの、
となっている。
よって、1 は最後の
によってのみ場所が移動するので、
その 1 の場所を見れば
(
) が一意に決定することになる。
よって結果の順列が
この論法を繰り返せば、結局
が言える。
例えば のとき、
順列
に対して、
それを逆順にしたもの
反転と巡回の積に対して、次が成り立つ。
証明
の場合を考えると、
これを繰り返せば、補題 1 により、
この補題を使うと、次のことが示される。
に対して、
とすると次が成り立つ。
(13)
証明
まず、反転を
は、
個の要素を持つが、これは次の
で 2 つに分けられる:
(14)
そして補題 4 を使うと、
この は順列とその反転の対を持たないことが示される。
が
の元ならば、
その反転
は
には含まれない。
証明
とすると、
ならば
である。よって補題 4 より、
(
) となるが、
よって、
より
竹野茂治@新潟工科大学