もちろんそこには積分も三角関数も使われていないが、
その説明手法はまさに積分の考え方そのものであるし、
弧の長さの方からくる がなぜ面積にも現れるのかがよくわかる、
とてもいい説明だと思っている。
円の面積の公式 (3) は、
積分も三角関数も使わずにそうやって既に得られているので、
よって扇形の面積による (1) の証明は、
循環論法でもなんでもない、というのが私の考え方である。
ところで、今回手近な本 (高校の教科書や大学の微積分の本) 13 冊で調べたら、 8 冊が扇形の面積による証明、 証明が書いてない (数値で示したり弧と AB が近いと説明しているだけのもの) が 2 冊、サインの定義を級数にしているものが 1 冊 ([1]) で、 弧長で説明しているのは [2] 1 冊だけであった。 残りの 1 冊は [3] で、これは最初は扇形の面積で説明しているが、 それは「擬証明」であると述べ、最後の補遺で改めて弧長と微積分を利用した 別な証明を与えている。
これまで、弧長での証明は何度か見たような気がするので、 手近な教科書のほとんどで採用されていなかったことが意外な気がしたが、 もしかしたら多くの方が私に近い立場を取っておられるのかもしれない。
なお、4 節の冒頭にも書いたが、
今回たまたま見た [4] に 4 節の
補題がほとんどそのまま載っていて、
それを使って「弧 BC BD」を証明していることがわかった。
この原稿とその雑誌の発行もほぼ同時期で、
全くの偶然だが、実は私の方は、11 月に高等学校の教員から聞いた
「循環論法」に関する質問を元にこれを書き出したのだが、
[4] はその雑誌の 10 月号の宿題の解答なので、
もしかしたらその辺りがつながっていたのかもしれない。
また、[4] によれば、同じ手法で「弧 BC BD」まで
確かに証明できるのであるが、
個人的には 3 節に書いたように弧長で証明するなら (16) で十分であり、
しかも (14) より (16) による
説明の方が受け入れられやすいのではないかと思う。
なお、ここまで書いたところで、弧長による (1) の 別の証明を紹介している [5] を見つけた。 そこでは (16) ではなく、むしろ
竹野茂治@新潟工科大学