ただ、本稿の長さを見てもわかる通り、当初期待していた彼らの証明の
「改良」や「簡略化」になったとは言いがたく、まだ学習しやすいものに
なってはいない気がする。
その主たる原因は、9, 10, 11 節の 主値積分を含む ,
,
の評価であり、
それらの特異性が高いために分割や場合分けを細かく行っているところの
複雑さである。
一方で、それらも最終的な極限はかなりシンプルなものになるので、
例えば (7) 節のように最後の部分積分の手前の式を
用いての評価が可能ならばその議論は易しくできるかもしれないが、
今回そのようなものは残念ながら見つけられなかった。
両方は無理でも例えば の方だけでも最後の部分積分をしない
形で考えてみるとか、またはさらに「非整数回の部分積分」を利用して
みる、などにより改良できるかもしれないが、それは今後の課題である。
また、本稿の手法は Darboux エントロピーの形に強く依存しているため、
別な形の の式には適用することができない。
例えば中性子星に対する
の式の Tartar 方程式はまだ解かれていない
と思うが、別の形の
に関する Lu [14] の考察のように、
DiPerna [6] の手法に戻っての議論を行えればよいが、
そうでなければ、今のところは手立てがほとんどない。
Darboux エントロピーに対応するようなエントロピーの Green 関数表示が
得られたとしても、Darboux エントロピーの場合のような
「
階微分」に相当することが行えるかどうかも疑問である。
よって、等エントロピー流の
に対して、
「Darboux エントロピーの
階微分」には依存しないような Tartar 方程式の解法を見出すことができれば、
の他の形の場合に適用できるかもしれないので、
今後も等エントロピー流に関する証明の改良、別証明などを
継続して考えていく予定である。
竹野茂治@新潟工科大学