2 基本事項
証明のおおまかな流れや用語、記号等の多くは、前の報告 [3] と
ほぼ同じなので省略し、本稿ではそれとは違う部分のみを解説するが、
基本事項を本節でまとめて紹介する。
理想気体の 1 次元等エントロピー流の方程式は、
(1)
である。ここで、
(
) は時刻、
(
) は位置、
,
が未知関数で、
(
) は気体の密度、
は気体の速度、
は気体の圧力、
は定数で、
,
である。
未知関数
は、リーマン不変量
に置き換えて考えることが良く行われる (
)。
一般化エントロピー対
は、
(または
) の
関数で、次の方程式を満たすもの。
(2)
これは、(1) の滑らかな解
に対しては、
常に
(3)
となる条件として得られるものである。
をエントロピー、
をエントロピー流束と呼ぶ。
(2) を
で書けば以下のようになる。
(4)
ここで
は
であり、(1) の準線形双曲型方程式としての係数行列の
固有値である。
方程式 (4) を満たす一般化エントロピーの中で、
Tartar 方程式の解法で使われるのが Darboux の公式として与えられる
エントロピーで、本稿ではそれを Darboux エントロピーと呼ぶ。
(5)
ここで、
は任意の滑らかな関数、
は定数で、
(6)
である。DiPerna の [5]、
そして以前の考察 [3] では、この
が自然数の場合、
すなわち
の場合を扱っているが、
本稿ではこの
が非整数の場合を考える。
Tartar 方程式とは、方程式 (1) の近似解の極限を
記述する Young 測度の族
に対するもので、
任意の一般化弱エントロピー対
に対して成立する以下の式を指す。
(7)
ここで、
は、確率測度
での積分
を意味する。この方程式 (7) を満たす Young 測度
が
中心の
測度、すなわち
となることを示すのが目標である。
なお、この Tartar 方程式も、本稿では
の代わりに
主に
で考える。
竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-03