4 II の解と楕円関数
本節では II の場合の方程式 (12) を考える。
(12) は書きかえると、
となり、
とすると
より
となり、
の動く範囲は
だったので、
(14)
とすると
と
は 1 対 1 に対応し、
で、
となる。
まず、(15) の
に対する方程式
(16)
の解を考える。これは、変数分離形で、よってその解は、
(17)
により表されることになる。
この
は第 1 種楕円積分と呼ばれ、
この逆関数が通常楕円関数と呼ばれる。
その状況を少し詳しく考える。
では (17) は
でも収束するので、
は
で定義された関数となる。
その
での値
(18)
は第 1 種完全楕円積分と呼ばれる。
命題 1
は
で単調増加な奇関数で、
値域は
の変曲点は
のみで、
では下に凸。
-
,
,
証明
1. は容易。
2. は、
と、
より
から得られる。
3. は、Lebesgue 単調収束定理から容易に示される。
この命題 1 より、
のグラフは
のグラフと同様の形となることがわかる。
そして、この
の逆関数
(19)
を通常
と書く。
これが楕円関数の一つである。
しかし、この
は、
今のところ定義域が
、
値域が
の単調増加な連続関数であるが、
それに対し楕円関数
は、
本来この
の定義域を後で述べるように
実数全体に拡張した周期関数を指す。
本稿では、拡張前の逆関数と、それを拡張した楕円関数を区別して書くこととし、
の記号はあえて用いないこととする。
補題 2
が
で連続で、
以外では微分可能であり、
(有限値) のとき、
は
でも微分可能で
となる。
が
上の奇関数であるとき、
(20)
のように実数全体で定義される周期関数に拡張した
も
奇関数であり、もし
が
で
級で、
かつ
,
(有限値) であれば
も
級となる。
が
上の奇関数であるとき、
任意の整数
に対し、
(21)
として実数全体で定義される関数に拡張した
も奇関数であり、
もし
が
で
級で、
かつ
(有限値),
であれば
も
級となる。
証明
1. 平均値の定理より、
,
なる各
に対し
で
となる
が取れ、
よってこの式は
のときいずれも
に収束する。
2. まず
が奇関数であることを示す。
のときは、
なので、
であり、一方
は
で、
は奇関数なので、
より
となる。
のときは、
より、
であり、
は
より
よりやはり
となる。
次は
級についてであるが、
は奇関数で周期
なので、
導関数の連続性については
のところだけを考えればよい。
では
、
では
で、
は偶関数なので、
となり、1. より
も 0 となり、
よって
は
級となる。
では
、
では
で、
は奇関数なので、
となり、1. より
も
となり、よって
級となる。
3. 連続性は容易。奇関数であることは、
の
ときは、
より
となることからわかる。
級であることも
のところだけを
考えればよい。
では
より
,
となる。
よって、
が偶関数、
が奇関数であることにより、
より、1. により
,
となり
級
となる。
の逆関数
は、
に関して単調増加な奇関数で、
命題 1 の 3. により
となる。
これは
の
でのグラフに似た形となる。
そして、この
を、補題 2 の 2. により
周期関数に拡張した
が、
いわゆる楕円関数
である。
よって、
が
級であることを示すには、
あとは
が有限な値であることを示せばよい。
より、
で微分すると
だから
(22)
となる。よって、
(23)
となるから、
となり、よって補題 2 の 2. により
は
級であることがわかる。
実際は、さらに上の階数の導関数も連続で、解析的につながることが
知られている。
さて、II の (15) の解に戻る。
特異解
以外の解は、
を変数分離して、
となり、よって局所的、
すなわち
である
に対しては、
として解が求まることになる。
すなわち、
,
と
それらの平行移動が局所的な解となる。
そしてその「最大延長解」は、
,
とその平行移動から
構成される
級関数
で表現されることになり、
また
より
も
の平行移動として表されるから、
よって (15) の実数全体で定義される一般解は、
(24)
と表されることがわかった。よって、(14) より
は、
(25)
となる。(14) より
は解とはならないので、
これが (12) の一般解となる。
ではこれは滑らか (少なくとも
級) で、周期
(26)
を持つ周期関数で、振幅は
となる。振幅
が
ならば、
周期 (26) は (8) の
に近いが (
)、
そうでなければ周期は
だけでなく振幅
にも
依存する振動となる。
特に、
のときは、
より、
となることが Lebesgue 単調収束定理より示される。
それは、次節の III の
の場合に対応する。
なお、
に対する解の周期と、
に対する解の周期の比
は、
以下のようになる。
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
1.017 |
1.040 |
1.073 |
1.180 |
1.373 |
1.528 |
1.762 |
は
が
では無限になるが、
2 を越えるのは
、
3 を越えるのは
、
4 を越えるのは
なので、
にかなり近づかないとそれほど大きな値になるわけではない。
なお、最近の gnuplot には完全楕円関数が実装されていて、
上の値はそれで計算したものである。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-12-06