3 エネルギーと力学系的考察
非線形の方程式 (3) は、
表には
が現れない形なので、
いわゆる階数低下法により 1 階の微分方程式に帰着させて解くことができるが、
そのような形式的な解法ではなく、
もう少し詳しく解の様子を追いながら考えたいので、
それとは別のエネルギー保存を利用する方法を用いる (といっても
実質的にはそれほど違わない)。
(3) の両辺に
をかけると、
となるので、1 回積分できて
(9)
が得られる (
は定数)。
これは、1 階変数分離系の方程式なので、
形式的にはここから解を求めることができるが、
少しこの (9) を力学系的に考察してみる。
なお、重りの速度
は、
(10)
なので、運動エネルギーと位置エネルギーの和は (6), (9) より
となり定数となる。
すなわち、(9) はエネルギー保存則と同等で、
よって 1 階積分して得られた 1 階の方程式は、
エネルギー保存を利用したと考えることができる。
そして
は、総エネルギーに比例する値となる。
さて、(9) を力学系的に考察するとは、
が表面的に現れない方程式 (9) を、
横軸
, 縦軸
の相平面上の曲線と見て、
時間
をその曲線のパラメータと見ることで、
解
の挙動を曲線上の点の移動と考えることである。
当然
の大きさによって、その曲線の形は変わり、
であれば、
(9) を満たす
は存在しないので、
に対して以下のように場合分けをして書いた曲線が
図 2 である。
図 2:
相平面上の (9) の曲線
ifGPcolor
ifGPblacktext
tbcolrgb1,1,1
|
I の
のときは、
より
の 1 点と
なる。
II の
のときは、
より、
(11)
となる
がただひとつ決まり、(9) は
(12)
となり、
の範囲の閉曲線となる。
軸の上では
だから
は増加して
曲線上の点は右回りに進み、
軸の下では
だから
は減少して
点はやはり曲線上を右回りに進む。
ただし、
,
の点に有限時間で
たどりつくかは積分次第である。
III の
のときは、
より
(13)
となる。これは、
を通る解を想定すれば、
の範囲を動き、
では
となるが、
そこまで有限時間でたどりつくかはやはり積分次第である。
IV の
のときは、
曲線は
の領域、または
の領域に横たわる
無限に左から右に伸びる曲線になる。
は正のある範囲、負のある範囲にあるので、
その一定の範囲の速度で
は変化し、
は増え続けるか、または減り続ける。
これは、振り子で言えば、支点の回りを 1 方向に永遠に回転し続ける解
を意味する。
以後、これらの各場合の解の表現を求めていくが、
I は容易で、上で見たように、これは
という解、
すなわち重りが鉛直下向きの位置で止まった状態のままであることを
意味する。
次節以降で、II,III,IV の解を見ていく。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-12-06