B.4 物理的なエントロピーの凹性
最後に、B.3 節で述べた、
の
での凹性について述べておく。
この
に関する 2 階微分による行列
を
計算するわけであるが、
この行列の計算は、これまでのように
で
行えばよい、とはいかない。
まずは、そこから検証する。
に
を代入したものを
と
すると、
であり、また、
であるから、
となる。
今、
行列
と定数列ベクトル (
行列)
に
対し、
という
行列となるが、これを記号的に
と書くことにする
(
は、単独では意味のない記号になってしまうので、
特にこのように書くこととする)。
こうすれば、
も
の関数
である場合も
のように、積の微分の形に書くことができる。
この記法により、
となるが、
なので、よって、
となる。
今、右辺の最初の行列を
とすると、
となるので、
となる。よって、
であるから、
が正定値 (負定値) であることと、
が正定値 (負定値) であることは同値となる。
ただし、一般には
なので、
と
が対応するわけではない。
今度は、
,
に対して
を計算してみる。
であり、また定義より
であり、
となる。
なので、よって、
となる。ここで、
より、
なので、
となり、よって
を
で表わせば、
となる。
次に、具体的な
に対して、
を求める。
(B.3) より、
と書けるから、
となり、よって、
となり、よって、
となる。
今、
に対して、
となるので、
より、これは確かに 0 以下で、
しかもこれが 0 になるのは
となるときのみで、これは
を意味するから、結局、
ならば
であることが言え、
よって
が負定値であることが言える。
ゆえに
は負定値となり、
が凹であることが言える。
竹野茂治@新潟工科大学
2018-08-01