前節で、勾配
は、グラフの等高線に
垂直なベクトルであることがわかったが、
本節では勾配
の意味をより明らかにする。
命題 1 で
方向微分係数は勾配と方向ベクトルとの内積で表現されることがわかったが、
と方向ベクトル
のなす角を
(
) とすると、
は単位ベクトルなので、
(21)
と書ける。
、すなわち
の方向を変化させると、
(21) は
、
すなわち
と
が同じ向きのときに
最大値
を取り、
、すなわち
と
が逆向きのときに
最小値
を取る。
命題 3
のとき、
で
は
の方向に最も大きく増加し、
その変化率 (方向微分係数) は
となり、
その逆方向に最も大きく減少し、
その変化率 (方向微分係数) は
となる。
命題 2 より
に垂直な方向には
は変化せず (等高線の方向)、命題 3 より
の方向には最も激しく変化することになる。
この事実は最急降下法などの数値計算でも利用されている。
結局、勾配
は以下のようなベクトルになる。
- 方向 =
が最も大きく変化する方向で、等高線に垂直な方向
- 向き =
の増加方向
- 大きさ = その方向の
の変化率 (接線の傾き)
「勾配」という名前も、この性質に由来する。
竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-24