前節のベクトル
は、ベクトル解析では
の「勾配」
と呼ばれている。
本節では、
のグラフの等高線と勾配との関係を考える。
2 変数関数
のグラフは、3 次元空間内の曲面となる。
その等高線は、
(10)
で定義される曲線である。ただし、関数や
の値によっては
曲線にはならない場合もある。
例えば、放物面
の等高線は、
(11)
より、半径
(
) の円となる。
等高線と勾配とは次の関係が成り立つ。
命題 2
等高線 (10) が滑らかな曲線である場合、
その上の各点
で、
ベクトル
と等高線は垂直になる。
これを以下に説明する。
等高線が滑らかな曲線である場合、
の近くでは、
(10) の
での接線が
軸と
平行ではない場合は
(12)
の形に、そして (10) の
での接線が
軸と
平行ではない場合は
(13)
の形に表すことができることが知られている。
例えば、(11) の等高線は、
点
を含む部分としては
と (12) の形に書けるし、
を含む部分としては
と (12) の形に書くことができるが、
接線が
軸に平行になる円の右端と左端の
,
の内部に含む円の部分を (12) の
形に書き表すことはできない。
一方で、これらの点を内部に含む円の部分は、
(13) の形になら表すことができて、
例えば、
の近くでは
の近くでは
のようになる。
このように、等高線が滑らかな曲線の場合は、
その上の各点
を含む部分は、
(12) か (13) のいずれかの形で書ける。
命題 2 の説明に戻る。
まずは (10) の上の点
) を
含む (10) の部分が (12) の形に
書ける場合を考える。
この場合は、
(14)
であり、
で等高線 (10) に接するベクトルは、
傾きが
のベクトル、すなわち
(15)
となる。
命題 2 を示すには、この
と
が
垂直になることを示せばよい。
今、(12) は、(10) を式変形したものなので、
が (12) を満たせば (10) を満たし、
よって
の近くのすべての
に対して
(16)
が成立することになる。この式の両辺を
で微分すれば、
合成関数の微分により
となるので、
とすると (14) より
となる。(15) より、この式は
(17)
を意味するので、これで
が示された
ことになる。
次は、(12) ではなく、
代わりに (13) と書けた場合を考える。この場合
(18)
であり、
は
の
に関する傾きを意味するので、
で
に接するベクトルは
(19)
となる。
の近くの任意の
に対して、
(13) の
,
は (10) を
満たすので、
(20)
が成り立つ。この式の両辺を
で微分すると
となり、
とすると (18) より、
となり、よって
が言える。
すなわち、(12), (13) いずれの場合も、
等高線に接するベクトルと
とは垂直となり、
これで命題 2 が示されたことになる。
例えば
の場合、
となり、これは原点からその点までの位置ベクトルの 2 倍のベクトルで、
等高線 (11) の円に対して半径方向となるので、
円とは明らかに垂直になる。
竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-24