2 テント写像の場合
まずは、テント写像と呼ばれる次の
について考える。
(3)
なお、この関数と本稿で紹介する性質については、
離散力学系分野では良く知られた話のようで、
本稿で紹介する話の多くが、例えば [3] に書かれている。
補題 2.1
なお、
に対して
が
で稠密であるとは、
任意の
に対し、
で
となる部分列が存在することを意味する。
今、
に対し、その 2 進展開
を、
(4)
と書くことにする。
なお、この 2 進展開は一意的ではなく、
あるところから先が全部 1 の場合は、それを繰り上がりして
その先を全部 0 に換えたものと等しい:
また、この最後の記号のように、あるところから先がすべて 0 の場合は、
その部分を省略した形で書くことにする。
さらに 0 か 1 の
に対して
と書くことにする。
ならば
より、
で、
ならば、
より、
なので、
(5)
となる。よって、これを繰り返せば、任意の自然数
に対して
(6)
となる。よって、
の有限個の
のみが 1 ならば、ある
で
の 2 進展開が循環小数 (すなわち
が有理数) ならば
は有限集合
となることがわかる。そして、
が稠密となる
も
以下のようにして実際に構成できる。
稠密性に対しては、
,
となるすべての
整数
に対し、
(7)
となる
が取れることを示せばよいが、この
を、順に
(8)
のように並べる。これらは 2 進展開で表すと、
(9)
等となる。
の最初の位が順にこれらになるようにすれば、
(7) を満たすので、そのように
を作成する。
すなわち、最初の桁を 0 とし、それ以降は (9) の並びに、
そこまでの 1 が偶数個になるように調整用の 1 を挟んだものを
とすればよい:
(10)
下線のついた部分が (9) の並び、
下線がついていないのが調整用の 1 で、この
を使えば、
反転が随時解消され、シフトによって、下線を引いたところ以下の列が
の値として現れることになる。
そして
が成り立つ。
これにより
は
で稠密となる。
さらに、同じようにして、任意の
に対して、
が
で稠密となるように
を
構成することもできる。
それには、(10) の下線部の先頭が出る場所が
の倍数
になるように随時 0 を挟んで調整すればいい。
例えば
であれば、
のように並べていけばよい。
すなわち、
と連続関数
、ある自然数
に対して、
(11)
が成り立つ場合、上の
に対して、
となり、
は
で稠密なので、
の連続性により
は
上で
に等しい
定数関数となり、
よって (11) を満たす関数
は定数以外ない
ことがわかる。
なお、本節の
の構成については、[3] にも
紹介されている。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-03-25