8 可積分な初期値について
この節では、付録として、6 節の最後に述べた、
で初期値が可積分な場合の一様な評価
を、
の極限としてではなく直接得るための計算を考えてみる。
そこで述べたように、この場合は
を示してそれを積分する、というわけにはいかないので、
最初から微分を積分の中に入れた形で考える。ただし、
絶対値のついた関数の微分を考えるために、
右からの微分係数
を用いる。
補題 5
が
級のとき、
![\begin{displaymath}
D^{+}\vert f(x)\vert
=\lim_{h\rightarrow +0}\frac{\vert f(...
...q 0),\ [1zh]
\vert f'(x)\vert & (f(x)=0)
\end{array}\right. \end{displaymath}](img192.gif) |
(36) |
証明
,
の場合は、
それぞれ
の近くでも
,
であるから (36) は明らか。
の場合は、
となる。
補題 6
が
(
) で
級のとき、
証明
,
に対して
なので、Lebesgue 収束定理により
となる。一方、
のとき、
となる。
この補題 6 によって、任意の
に対し、
 |
(37) |
が成り立つ。ここで、
の積分範囲を、
の 2 つに分けると、補題 5 より、
となる。
まず、
上の積分であるが、
これは次の補題 7 により 0 となることがわかる。
補題 7
が
級 (
) のとき、
は高々加算集合。
この補題 7 は、
次の補題 8 により得られる。
補題 8
が
級 (
) のとき、任意の
に対して、
は集積点を持たない。
この補題 8 が言えれば、
は離散的なので高々可算集合となり、よって
も高々可算集合であることが言え、
補題 7 が成り立つことになる。
この補題 8 は、以下のようにして示される。
今、
(
) がすべて異なる点列で、
であるとする。
このとき、
なので、その極限においても
となり、よって
となる。
ところで、
とロピタルの定理により、
となるが、
に対しては
なので、よって
となる。
そしてこれにより、再びロピタルの定理により、
となるが、
においてはやはり
なので、
となる。
これを繰り返して結局
が得られるが、
これは
に矛盾する。
よって
は集積点を持たない。
結局
上の積分は 0 となるので、
(38) より
 |
(39) |
となる。この最初の積分は、
と変形できる。ここで
は、
で定義される
級の関数である。
今、
は
に関して連続なので
は
開集合であるが、その連結成分は開区間であり、
それらは高々可算個で共通部分を持たず、
と書ける。各区間
では
は正、または負のいずれかであり、
 |
(41) |
となる。
, あるいは
の場合も
は遠方で 0 に収束するから、
その場合も (41) は成り立つと見ることができる。
よって、
となる。
の積分の方も同様に 0 となる (
,
に適当な減衰性があるという仮定の元)。
よって、
は
のみが残ることとなるが、この積分は (
も可積分であるとし、遠方での減衰性を仮定すれば)、
上と同様に各開区間の積分に分けることができて、
と変形できる。
ここで
上では
、
上では
で、
であるから、
となる。よって、
![\begin{displaymath}
\left[u_x\right]_{c_m}^{d_m}\leq 0,\hspace{1zw}
\left[u_x\right]_{p_j}^{q_j}\geq 0\end{displaymath}](img263.gif) |
(43) |
となるので、
よって (42), (43) より
が言え、
結局 (37) と Fubini の定理により、任意の
に対して
が言えることになる。
これが言えてしまえば後は前と同じで、

となり、(34) が得られることになる。
ただしこちらの場合は、
それなりに
の遠方に関する減衰性や可積分性は必要とするものの、
の極限を用いないので、
初期値がコンパクト台を持つ必要はない。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月25日