この 1. から ,
は
に関して一様に有界なので、
ある部分列
(
) がとれて
それは、Lax-Friedrichs の差分や人工粘性法による近似解は 1., 3. のように 一様に「おとなしい」、つまり単調性が保証され、 微分もそれほどあばれないような近似解であるのに対し、 Glimm の差分は元々弱解が持つ特異性を損わないように作られたものだからである。 逆に Lax-Friedrichs の差分や人工粘性近似解は弱解の特異性をなまらせる性質があり、 弱解の特異性を調べたいような場合は、 理論上も応用上 (数値計算等) もあまり適さない。
本節では、人工粘性近似解について上の性質を簡単に説明するが、 むしろ初期値に対する制限を緩くできる Lax-Friedrichs や Godunov の差分近似解については、[4],[15] を参照のこと。
人工粘性近似解は、以下の方程式の解
である。
(24)
(25)
初期値
は、
次のような有界性と
に関する遠方での減衰性を持つとする。
(26)
(27)
(28)
初期値の近似である
も、
性質 (26), (27) を
損わないように作り、
に一様に
(30)
(31)
方程式 (24) の主要部は
であるから、
これは半線形放物型方程式であり、
よって初期値が滑らかならば解
も滑らかになることが期待される。
ただし、(24) は
に特異性を持っているから、
である必要がある。
半線形放物型方程式の解の存在定理については偏微分方程式の成書 (例えば [10] 等) を参照のこと。また、
(24), (25) に対しては、
初期密度が
であれば、
その解
も
となるような
が取れることがアプリオリに示される。
それについては、[1],[5] を参照のこと。
ここでは、滑らかで、 の遠方では
に十分速く収束するような解
が存在するとして、必要な性質を示す。
まず 1. の有界性を考えよう。
今、
三角領域上 ,
は有界であり、逆に
,
の有界な範囲
すべての に対して
で、
かつ
が
の内点となるように
,
を取ると、
となる。
証明
方程式 (24) を ,
について書き直すと、
以下のようになる。
(32)
同様にして
も言える。
この命題の ,
は、
仮定 (30) より
とは無関係に取れるから、
この命題 1 により近似解の性質 1. が示されたことになる。
なお、この命題 1 の性質により、
三角領域
は 不変領域 と呼ばれることもある。
次に、他の性質を導くのに必要な不等式を求める。
エントロピー対 () に
を代入したものを
(33)
と Darboux の公式 (14) による
に対し、次が成り立つ。
証明は容易であるが省略する。
詳しくは [4],[15] を参照のこと (ただし [15] のこの補題の証明には少し誤りもある)。
今、(33) のエントロピー対を (
) としたものを
で積分すると、
の
の遠方での
への漸近が十分速いという仮定の元、
次が成り立つ。
(34)
(35)
有界な開集合
と
に対して次が成り立つ。
今、
を有界な開集合とし、
を (14), (15) で与えられるエントロピー対とする。
このとき、
に対して、
部分積分と (33) により、これを
一方、部分積分により
残りの性質 2., 4. は、 上の計算と同様にして、補題 2、 (35) などから容易に示される。
竹野茂治@新潟工科大学