2 膨張波、衝撃波
局所的に可積分な初期値
と
で局所的に可積分な
が (1) の
弱解であるとは、コンパクト台を持つ任意の
関数
に対し、
(2)
を満たすことで、
さらにエントロピー解であるとは、弱解でかつエントロピー条件を満たすこと。
エントロピー条件には、同値な条件がいくつか存在するが、
本稿では主に区分的に
な弱解のみを考察するため、
Oleinik 条件
(3)
を、任意の
に対して満たすような有限値
が取れること、
をあげておくが、あとで別のエントロピー条件である Lax 条件もでてくる。
エントロピー解として代表的なのは、リーマン問題と呼ばれる初期値問題
(4)
に対する解である膨張波
と衝撃波
で
ある。
のときは、(4) のエントロピー解は
連続で区分的に滑らかな膨張波
(5)
となる。ここで、
は、
(6)
であり、
より
は単調増加なので、
は一価関数となる。
この解 (5) を
と
書くことにする (図 1 左)。
のときは、不連続が直線的に進行する衝撃波
(7)
となる。ここで、衝撃波速度
は、Rankine-Hugoniot 条件
(8)
から決定する (図 1 右)。
なお、膨張波は (5) を
方向に移動したものは Oleinik 条件を満たさないため現れないが、
衝撃波は (7) を
方向に移動したもの
(9)
も出てくるので、これを
と書くことにする。
また、一般にエントロピー解
がある曲線
に沿って
第一種不連続である場合は、Rankine-Hugoniot 条件
(10)
と、Lax 条件
(11)
を満たす必要がある。
これにより、不連続箇所では必ず
ジャンプダウン
でなければ
いけないことになる。(8) はこの条件を満たしているし、
逆に (8) がこの条件を満たすのが
のとき、
ということになっている。
なお、非粘性バーガース方程式と呼ばれる
の場合には、
膨張波の
は
で、衝撃波速度 (8) は、
となる。
(5) の膨張波と (9) の衝撃波を
合わせて単純波と呼ぶが、
後で (10) と (11) を満たす、
直線的ではない不連続性も現れる。
そのような不連続性も本稿では衝撃波と呼ぶことにする。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-02-21