8 h(a)Bn の積分の評価
本節から、
の
での積分の一様有界性と
その極限について考察していく。
ここでは、
,
は、最後まで部分積分した展開式 (36), (42) を用いる。
まず、簡単のため (36), (42) の積分項を
(97)
と書くことにする。また、
であるが、
少し評価しづらい項を消すために、
の代わりに、
を用いる。すなわち、
で考える。この
は、(36), (42) より
(98)
となる。
ここで、
としたが、
これは
以外で連続で、
で有界かつ
の関数である。
(36), (97), (98) に
より、
を展開すると次のようになる。
ここで、
(
) は以下の通り。
ここで、
(100)
とした。
これら
に対して、
と、さらに (99) の
頭についている
から
をひとつ借用した
積の
に関する積分
(101)
の一様有界性、およびその
のときの極限を
考えることにする。
なお、以前も少し用いたが、以後自然数
に対し、
(102)
のように書くことにする。
まずは
の評価から。
の定数の係数を除いた半分の項
については、
とすると
となるので、その積分を
とすると
となって
が一つ余ってしまうが、
それは、次のように
,
の積に吸収できる。
よって
と評価でき、これにより
が、そして
が
上
に関して一様有界であることがわかる。
ここで
は
の
,
を取りかえたものとした。以下同様に書くことにする。
また、
には
倍がついているので
と考えてよく、このとき
に対して
なので、
となるので、Lebesgue 収束定理により
、
そして
が
に対して
(103)
となることがわかる。
なお、以後もこのように
の係数を除いた半分 (
の
ように書く) でまず考察を行う。
次は
。この場合係数を除いた半分の項は
により
であり、
なので、この積分は
となり、
とすると
より、
となる。
は有界なので、
と評価され、よって
,
は一様有界となる。
極限は、
となるが、
は
で不連続なので、
後ろの積分を
と分けることで、前の積分では
より
, 後の積分では
より
となり、
の極限は Lebesgue 収束定理より
となる。よって、
の極限は、
となる。ここで、
(105)
なので、一般に
に対して
(106)
と書くことにすると、(105) より
(107)
も容易にわかる。これにより (104) の極限は、
と書ける。ここで、
の
での段差は、
(39), (44) より
(109)
なので、よって (108) は
(110)
となることがわかる。
なお、この
は、[3] の 6 節
の
に等しく、よって結論に重要な役割を果たすことに
注意する。
次は
。
係数を除いた半分の項
は、
の場合と同様に考えると、
であるが、さらに
とすると
よりその積分は
となる。よってこの場合も
とおさえられて
,
は一様有界となり、その極限は Lebesgue 収束定理より
となる。よって
の極限は、
(44), (106) より、
となることがわかる。
次は、
の前に先に
から考える。
より、
の台が [1/2,3/2] に含まれることから、
となる。
2 つ目の積分の頭にある
は、
これまでのような
から
での変数変換で消しても、
の特異性が残ってしまうのでうまくいかない。
よってここでは
を利用して、
は
に
吸収させることを考える。
すなわち、
により、
となる。ここで、
は [1/2,3/2] で
なので、
,
は一様有界となる。
極限は、
より、Lebesgue 収束定理により
は
に対して
(112)
となる。
次は
に戻る。
と同様に変形すると、
とできるが、
は
ではないので、
とは違い
を
に吸収させることはできない。
よって、この場合は
の積分を
全体に広げてから
と置換することで消すと、
となる。
この式単独で有界性を示すのは難しいが、
全体で考えれば
可能である。
,
を入れかえたもう一方の積分
において
と
を入れかえると、
は
で対称なので、
となり、よって
となるが、命題 3 より、
となるが、今
を
(114)
とすると、
は非負、連続、かつ上に有界な関数となる。
これにより (113) は、
となるので、よってこの左辺は
上有界となり、
よって
は一様有界となることがわかる。
の極限は、(115) の左辺は
より 0 に収束するので、
Lebesgue 収束定理により
(116)
となる。
次は、
の含まれる
は後回しにして、
を先に考える。
この 3 つの積分でそれぞれ置換をすれば
は
むしろひとつ余計に消せるのであるが、
そうすると一番外の積分で
によらない
関数が取れなくなる。
よって、まず
と
に関して
と
によって
置換をすることで
を消すようにすると、
となり、これは
を固定すれば当然可積分であるから Fubini の定理より、
とできるが、
,
であり、
最後の
の積分も、
と置換すれば
すべての積分で
によらない
関数が取れることになる:
これで、
と評価されるので、
,
が一様有界となる。
極限は、
より
であり、また
となるので Lebesgue 収束定理より、
となる。そしてこの極限は
と
を
入れかえても値は変わらないので、
(117)
となる。
次は
。これは今の
と同じように評価できる。
とすると、
,
なので、
最後の積分で
とすれば、
となるので、
でおさえられ、
,
は一様有界となる。
の極限は、Lebesgue 収束定理より、
となり、
,
の入れかえでこの極限は
変わらないので、
(118)
となる。
以上で、
を含む
,
,
以外の評価は
すべて終わったことになり、いずれも一様有界で、
(110), (111) の
,
以外は
すべて 0 に収束することがわかった。
竹野茂治@新潟工科大学
2023-04-03