3 複雑な関数の微分
次は、単純には合成関数と見ることができない複雑な関数の微分について紹介する。
講義では、以下のような関数は合成関数とは見られないと例示した。
(5)
例えば、
と置いても
となって
が
残ってしまうため、これは合成関数にはならない。
合成関数であるためには、
は
だけの関数でなければいけない。
では、この関数は微分できないかと言えば、そうではなく、積の微分などと
組み合わせればちゃんと微分できる。
つまり、
のように、合成関数と
の積と見て、積の微分を先に適用すればよい。
まず、
(6)
と置くと
となる。ここで、
は
を変数とする関数
であることに注意する。積の微分により、
(7)
となる。次にこの
を求める。
は (6) より合成関数で、
とすれば
なので、合成関数の微分により、
と求まる。これを (7) に代入すれば、
(8)
と求まることになる。
合成関数と見られる部分を分離して、
合成関数部分の微分にのみあらためて合成関数の微分を使えばよい。
なお、この式はさらに変形すると、
(9)
となる。
同様に、
(10)
も、
では
に
が残るので単純な合成関数ではないが、
合成関数が含まれる商と見ることで微分ができる。
とすれば、
は合成関数で
なので、
まず商の微分により、
(11)
となる。次は
を求める。
とすれば
より、
となるので、これを (11) に代入すれば、
(12)
と求まることになる。なお、さらに変形すると、
となる。
さらに、合成関数と合成関数の組み合わせもありうる。
例えば、
(13)
のような場合である。これも単純な合成関数ではなく、
では、
は
のみの関数にはならない。
この場合は、
と置くと、
となり、
は難しくない。
ただし、
がまだ簡単には求まる形ではないが、
とすると、
で、
が合成関数なので、
は別に合成関数の微分で求めることができる。
外側から順番に計算すると、合成関数の微分により
(14)
となる。
は、
とすると
より
なので、これを (14) に代入すれば、
(15)
と求まる。なお、さらに式変形すると、
となる。
竹野茂治@新潟工科大学
2021-11-08