の関数
(関数値は実数でも
複素数でも構わない) である行列
を行列値関数と呼ぶ。
に対し、
極限
を、
で定義する。
これは、すべての成分に対し
となることと同値である。
が
で連続であるとは、
が
の近傍で定義され、
かつ
を満たすこととする。
これは、すべての成分が
で連続であることと同値である。
これは通常の 1 変数関数と同様の定義であるが、区間での連続性や、 半連続性なども通常の 1 変数関数と同様に定義する。
が
で微分可能であるとは、
が
の近傍で定義され、
かつ極限 (微分係数)
で微分可能であることと同値であり、
となる。
高階導関数や
性 (
階連続微分可能性) なども
通常の 1 変数関数と同様に定義する。
行列の導関数について次が成り立つ。,
等は微分可能な行列値関数、
,
はそれぞれ定数値、定数行列とし、行列の和や積などは それらが計算できる場合に成立するものとする。
,
,
内のすべての
に対して
と
が可換であれば、
に対して
と
は可換。
内のすべての
で
が正則で、
に対して
と
が可換であれば、
に対して
と
はそれぞれ可換。
1., 2., 3., 4., は易しいので (成分を考えれば明らか) 省略。 5. 以降を示す。
5.
の両辺を
で微分すれば、3. により
倍すれば得られる。
6.
であれば、両辺を
で微分して
とすれば
と
は可換になる。
よって、容易に
が得られる。
7.
6. により
が成り立つので、
この両辺に左からと右から
をかければ、
と
は可換になるので、
容易に
が得られる。
なお、一般には
と
は可換ではない。例えば、
が定数行列の場合、
が区間
内で微分可能で、すべての
に対して
と
が可換であれば、
2. のみを示せばよい。
に対して
より
と
は可換なので
定理 4.2 より
とすれば、
となる。今、

の微分可能性により、
ある
,
が取れて、
である
任意の
に対して
となるので、

とすれば、
のときに 0 に収束する。
また、
となるので、
よって
となることがわかる。
結局、(11) より、
となる。