一般の 1 次元の保存則方程式
(9)
(10)
(11)
保存則方程式の弱解 (
,
) が満たすべき エントロピー条件 とは、
任意の、凸なエントロピーを持つエントロピー対
に対して、
超関数の意味で
(12)
実際には、物理的なエントロピーは凸ではなく逆に凹な関数で
総エントロピーは増大する (熱力学の第二法則) ので、
(12) とは符号が逆になる。
つまり一般化エントロピーは物理的なエントロピー を
として含んでいることに注意する。
なお、1 節で紹介した Glimm の差分法や補償コンパクト法による弱解はいずれもエントロピー解であるが、 (3), (4) のエントロピー解が一意的であることは、 Glimm の差分法のように変動の十分小さい解については保証されているが、 補償コンパクト法による大きな初期値に対するエントロピー解については まだその一意性は証明されていない。
保存則方程式 (9) が の場合、
方程式 (10) は 2 つの未知関数
,
に対する
本の連立方程式、
すなわち過剰決定系なのでエントロピー対の存在は一般には保証されない。
逆に
のとき、すなわち単独保存則方程式の場合は
方程式 (10) は 1 本なので、
任意の関数
に対して (10) を満たす
が取れる。
よって単独の方程式の場合には、ここから得られる豊富なエントロピー群を用いて Tartar 方程式を容易に解くことができる ([13] 参照)。
本稿で考察する の場合は、(10) は 2 未知関数に対する 2 本の連立方程式なので、
エントロピーは存在するが初期条件の自由度程度にしか存在せず、
さらに
も含むような解を考察する場合は、
その初期条件も一つは固定されてしまいさらにエントロピーの自由度は減る。
本節では、そこで中心的な役割を果たすエントロピー対を与える公式や、
具体的なエントロピー対を紹介する。
(13)
(14)
(15)
を与えることで (14), (15) によりエントロピー対 (外エントロピー) が得られることになる。
以下、本稿で重要なエントロピー対をいくつか紹介する。
のときは、
のときは、
を
なるものとし、定数
に対し
(16)
同様にこの に対する
の極限は
なお、後で の代わりに
(17)
同様に、
としたものの極限を考えると、部分積分により
(18)
Tartar 方程式を解くのに重要なエントロピー対を紹介する。 それは、ある
(21)
(22)
(23)
竹野茂治@新潟工科大学