7 境界条件を満たす解とその一意性
本節では、いよいよ元の問題の境界条件 (5) を
満たす解を考えることにする。
 |
(36) |
の場合は、これまでの考察から、
 |
(37) |
が丁度境界条件 (5) を満たす解 (のひとつ) となる。
では、(36) ではない場合はどうだろうか。
が B を通る条件は、
, すなわち
が
点 (
) を通ることと同じであるが、
もし、
の曲線が、
複数の
に対して交差することがあれば、
A, B を通る逆さサイクロイドが 2 つ存在してしまう可能性があるが、
(
) のグラフを
複数の
について書いてみると図 6 の
ようになり、交差がないだろうことが予想できる。
図 6:
複数の
に対するサイクロイド関数のグラフ
|
これらの関数のグラフに交差がなく、第 1 象限を埋めつくしていることを
以下でちゃんと示してみる。
すなわち、任意の
,
に対して、
 |
(38) |
となる
が常に存在し、
かつそのような
はただ一つしかないことを示す。
(38) をパラメータで表せば、
 |
(39) |
となるので、
,
に対し、
このような
,
がただ一組存在することを示せばよい。
(39) より、
 |
(40) |
となるが、まずこれを満たす
が一意に存在することを示す。
そのために、今
という関数を考える。
では、
なので
で、また
も容易にわかるので、
あとは
(
) を示せば、
が
から
の 1 対 1 の関数であることになり、
よって (40) を満たす
がただ一つ、
常に存在することがわかる。
となるが、この分子を
とすると、

より、
の増減表は以下のようになる。
よって、
,
となる
があり、
それを境に
の符号が変わるので、
の増減表は以下のようになる。
よって
(
) となることがわかり、
、すなわち
が
で単調なことが示され、
(40) となる
の一意存在が示された。
の方は、(39) により
と一意に決定する。よって、これにより (39) を
満たす
,
が、ただ一組、
そして常に存在することが示された。
結局、
,
の場合、すべての A, B に対して、
それを通る逆さサイクロイド (
,
方向に同じ比率で拡大したもの) が、
ただ一つ存在することになる。
なお、与えられた
,
からそのようなサイクロイドを書くための
車輪の半径
を知ることは、あまり容易ではなく、
となる
をまず取らなければいけないが、
これは超越方程式であり、コンピュータによる数値計算は可能だろうが、
式の上で値を求めるのは容易ではない。
しかし、図の上でそれを行うには、例えば次のようにすればよい。
- 高さ
, 横
の長方形 ACBD の左下 C から右上 D への対角線を引く。
- 左下角から適当に小さい半径 (
) の輪を使ってサイクロイドを書き、
そのサイクロイドと対角線との交点 P を取る。
輪の 1 点に目印をつけておいて、長方形の底辺に沿って輪を
すべらないようにころがせば、実際にはサイクロイドの線を書かなくても
P を見つけることは可能だと思われる。
- P の真下の高さ
の点 Q を取り、
CQ を延長して長方形の右の辺との交点 R を取れば、
その R の高さが求める
となる (図 7)。
図 7:
サイクロイドの半径
の作図
|
これで
が求まることは、以下のようにしてわかる。
まず、P(
とすると、
となる
が存在するが、
なので、
となり、よって
となることがわかる。
また、
なので、
より
となることがわかる。
サイクロイドを書く手順がやや面倒だろうが、
このようにして半径
がある程度作図できれば、
逆さサイクロイドもある程度手動で作図できるかもしれない。
竹野茂治@新潟工科大学
2016年1月8日