2 一致推定量
この文書では、
(
) は、
ある一つの確率分布
に従う、互いに独立な確率変数とする。
の (母) 平均 (
) を
とし、
の (母) 分散 (
) を
とする。
の 不偏分散
と 標本分散
は、
次の式で定義される確率変数である。
 |
(1) |
ここで、
は
の算術平均 (確率変数としての平均ではない)
であり、
は平方和と呼ばれる。
は、容易に次のように変形できる。
ここで、
は、
の算術平均を意味するものとする。
によって与えられるある確率変数
が、
に関わるあるパラメータ
の 一致推定量 であるとは、
任意の正数
に対して、
 |
(3) |
となることを言うようである。
これは、
が十分大きければ、
の値は
の近くに分布して、
を大きくすれば、
から離れた値を取る確率は
いくらでも小さくなる、ということを意味していて、
これにより
の値でパラメータ
の値を推定 (点推定) できることの一つの保証が与えられることになる。
この一致性を示すのに重要なのが、次のチェビシェフの不等式である。
定理 1
確率変数
、および正数
に対して、
![\begin{displaymath}
P(\vert X-E[X]\vert>k)\leq \frac{V[X]}{k^2}
\end{displaymath}](img29.gif) |
(4) |
が成り立つ (
は
の平均、
は
の分散)。
証明
分散
を積分で表現して、
(4) の範囲に制限すれば、
![\begin{eqnarray*}V[X]
&=&
E[\vert X-E[X]\vert^2]
=
\int\vert X-E[X]\vert^2 d...
...\vert>k}\vert X-E[X]\vert^2 dP
\geq
k^2P(\vert X-E[X]\vert>k)
\end{eqnarray*}](img32.gif)
となるので、
で両辺を割れば (4) が得られる。
例えば、これを使って、標本平均
が
母平均
の一致推定量であることが確認してみよう。
平均
の線形性により、
であり、また、
,
が独立の場合
であるから、
となる。
よって、
にチェビシェフの不等式を適用すると、
となるので、
であることがわかり、
は
の一致推定量となる。
竹野茂治@新潟工科大学
2013年7月4日