最終目標は、非物理 front の総量に対して、(7.78) の
とできることを示すことである。ここで、
は、
すなわち
で存在する非物理 front 全体の集合とする。
(90) を導くために、大きな世代に対する評価である
p142 の (7.75)、実際にはその改良版である (88), (89) を用いて評価する。
を、世代によって
は、(89) より、
と評価でき、
となるようにすれば、大きな
を取ることで
が十分小さくなることを示すことができる。
一方
は、
以下の世代の非物理 front の個数と、
その大きさの最大値 (43) との積で評価する。
非物理 front の個数の評価を行うために、 またひとつ、[1] にはない新たな名前を導入する。 今まで「front 接続」という名前で、 ひとつの front をその特性族のまま最大に延長したものを考察してきたが、 これだと複数の front 接続が途中で合体 ([A-2],[S-2]) すると 1 本の front 接続になり、前方には一意に伸びるものの 後方には枝分かれする可能性があり、 また front 接続上で世代も変化しうる (前方に下がりうる) 可能性があった。 それらを排除するために、front 接続の枝葉を切り落として、 枝分かれのない 1 本の折れ線状の、世代も一定の「世代 front 接続」を 以下のように定義する。
世代 front 接続とは、front 接続同様に front を同じ特性族のもので 延長したものだが、
を世代が
である世代 front 接続全体の集合とし、
は集合の要素の個数を意味する)。
また、初期階段関数
の不連続点の個数を
とする。
第 1 世代の front は、
からのみ作られ、
で新たに
作られることはないので、
は、
から作られる front の総数に等しい。
よって、
の領域 (3.10 節の
) 内
にある Riemann 問題の初期値に対する最大の膨張波のサイズ
を
とすると、
に対して、
世代の front が新たに発生するのは
世代の front (世代 front 接続) と
以下の front (世代 front 接続) との衝突であり、
1 組の世代 front 接続同士の衝突は高々 1 回しか起こり得ないので、
その衝突点の個数は
以下となる。
また、各衝突点では、
世代の front は流入 front とは
異なる特性族に出るので、その個数は
以下
となり、よって
は、
荒く評価すれば、
であれば、

ならば
で、
よって
となるから、当然この場合も
が成り立つ。
なお、衝突は有限回で終わるので、
を大きくすれば、
あるところからは
となることに注意する。
一般に、
,
に対して、

とすると、
は
にしか依存しない
と
の多項式となる。
なお、[1] は、
の具体的な形は紹介せず、
と
のなんらかの多項式で評価できる、
その式の表現は問題ではない、と述べている。
さて、
に戻れば、
における
以下の世代の非物理 front の総数は、
以下の世代の世代 front 接続の総数
以下となるので、
(98)、および 5.2 節の (43) により、
は
に依存しないから、
よって
を小さくとることで、
を十分小さく評価できることになる。
ここから (7.78) を導くのであるが、
これまででてきたパラメータ
,
,
,
,
,
,
,
の意味と、
それらの依存関係について確認しておく。
は、初期階段関数
の不連続点の個数で、[1] では
p127 (7.17) の下に現れる。これは、
の作り方により、
と初期値
に依存して決まる値である。
は、定理 7.1 (p124) の (7.5), および定理 7.2 (p127) に
現れる正数で、初期値の全変動
を上から押さえ、
これを十分小さく取ればこれらの定理が成り立つ、というもの。
よって、この
をどのように取ればよいか、
に答えることが最終目標となる。
は、p133 に現れるもので、
Riemann 問題の解に対する評価である Lemma 7.2 を成り立たせるような
領域の大きさを意味し、本稿の
に対応する。
だから、ある程度は小さく取るものの、極限として 0 に近づけたり
するわけではない。
は、p131 に現れ、実際にはある条件 (本稿では (11) と、
3.10 節の
,
に
関する条件
) を満たすパラメータであり、
その範囲内ではいくらでも小さく取ることができる。
は、p138 に現れ、
に対して本稿の (13) を満たすように
取る正数で、
に依存して決まる値。
具体的には、(15) のように取ればよい。
初期階段関数の全変動がこの
より
小さければ (本稿の (16))、
に対して (23) が成り立つことになる。
は、p132 の近似解の構成で現れる、
accurate method と simplified method の選択に使用される正数。
今のところは他とは独立に自由に選べる。
は、p129 の accurate method で
膨張波を膨張 front に分解するときに使われる正数。
これも今のところは他とは独立に選べる。
最終的に定理 7.2 の成立を示すためには、
最初に
とは無関係に
([1] では
) を
取り、それに対し、(11) と、
を満たし、
さらに (82) の
が
となるよう
を 1 つ取り、
そして (13) を満たすように正数
を 1 つ取る。
そして、正数
を、
となるように取る。
ここまでは
には依存しない。
であれば、(7.17) (p127) により
このとき、任意の正数
に対し、
を、(38) を満たすように取る (
と
に依存)。
を取る (
,
,
に依存)。
,
,
に対し、
を取る (直接的には
,
,
,
,
に依存)
が得られる。
これで、「front の速度の変更部分を除いて」定理 7.2 が すべて検証できたことになる。
竹野茂治@新潟工科大学