その 1 つ目は「」である。
通常、保存則の論文等では「
」は、
の
番目の
固有値
としてしか使われないが、
この [1] では以下の 3 種類の意味で使用されている。
これは、[1] の筆者には便利なのかもしれないが、
読者にはあまりわかりやすいものではなく、
を見るたびにそれがどの意味かを
確認しなければいけない。
本来は、2 つ目は
, 3 つ目もそれを使うのであれば
別の記号 (例えば
) を使うべきだろうと思う。
もうひとつ [1] の 2 つ目の気になる記号として、
固有ベクトルの「」がある。
これは、「記号を変えずに意味だけ書き換える」ことがされているのであるが、
Bressan は自著、論文でよく同様のことを行っている
ようである (そして、そのために当初の目標と結果がずれてしまっている
論文もある)。
固有ベクトルは、5 章 (p90) の定義 5.1 で定義されていて、
ここでは固有ベクトル は単位ベクトルとして定義されている。
固有べクトルの向きは、真性非線形の場合は (5.5) (p91) のように取るとして、
これで真性非線形の特性方向の固有ベクトルは一つに決まることになる。
なお、線形退化の場合は
の向きは決定せず、2 通りがありうる。
ところが、5.2 節 (p98) で、真性非線形の場合は
「として、と正規化できる」
また、当然線形退化の特性方向の場合は
だから
このような正規化はできず、その場合
は単位ベクトルのままである。
その意味でも、本来はちゃんと記号を書き分けるべきであろうと思う。
なお、波面追跡法の本論の 7 章では固有ベクトル はほとんど
出てこないので、その点ではこれに関する実害はほとんどない。
竹野茂治@新潟工科大学