7 数値計算
6 節の考察により、
か
かで
での境界条件 (6) の要、不要が分かれることがわかったが、
それを数値計算結果と比較してみることにする。
それは、(5) の数値計算を通常の差分で考えると、
その計算方法は
が 1 より大きいか小さいかとは
無関係に計算できてしまうからで、つまり差分の作り方によって
-
で、境界条件 (6) を必要とする計算方法の場合
-
で、境界条件 (6) を必要とする計算方法の場合
-
で、境界条件 (6) を使わない計算方法の場合
-
で、境界条件 (6) を使わない計算方法の場合
の 4 通りがあることになるが、
6 節の考察により 1. と 4. は正しく、
2. は無用な境界条件を与えていることになっていて、
逆に 3. は
必要な境界条件がない状態になっているはずである。
本節では、これらの計算方法を実際にどのように行うのか、
そしてその結果と 6 節の考察との関係について紹介する。
方程式 (5) を普通に差分化すると
のようなものが考えられるが、これだと
の近くで、
での
の値を計算するときに
の差分の
の値を用いるので
での境界条件が必要になってしまう。
これを解消するには、
の差分の
の項に、
倍の代わりに
倍がついていればよく、
そうすれば
の計算のときはそれが 0 倍となって消えてくれることになる。
つまり、
の差分の代わりに
の差分を考えればよいことになる。
よって、
を
と変形して、
の差分を
 |
(30) |
とすればよい。
残る 1 階微分の
の項は、(29) では前進差分としているが、
その場合には
での境界条件は必要なく、
これを後退差分とすると
での境界条件が必要となる。
結局、方程式 (5) を、
と書き直した上で、
2 階微分の項は
での境界条件が不要な形 (30) を利用することにして、
1 階微分は前進差分とした
を
での境界条件が不要な差分 (4 通りのうちの 3. と 4.) とし、
の差分を後退差分にした
を
での境界条件が必要な差分 (4 通りのうちの 1. と 2.) として数値計算することにする。
以下にその数値計算結果を示すが、いずれも
、初期値は
とし、境界条件が必要な差分では
での境界条件は
としている。
また、
方向の分割数は
(
) で、
は
として計算した。
以下に示すグラフは、いずれも
毎の
のグラフを
平面に約 50 本重ねて表示している。
まずは、境界条件をつけた差分 (32) による結果を示す。
この差分では、
の場合は適切で、
の場合は不適切、
すなわち境界条件が余計になっているはずである。
図 1 を見ると、
の付近では境界条件に引きずられて
糸が不自然に折れ曲がっているように見えなくもないが、
の付近を拡大した図 2 を見ると、
そうでもない感じがする。
それに対して、
(図 3, 4),
(図 5, 6) と
が大きくなるにつれ、
糸がかなり不自然に境界条件に引きずられ、
の近くで急に曲がっていることがわかる。
つまり、
の付近では境界条件に拘束されて
不自然に急激に折れ曲がっていて、
それは本来は余計な境界条件のために
そのように不自然な形になっているのだと想像される。
次は、境界条件の不要な差分 (31) による結果を示す。
この差分では、
の場合が適切で、
の場合は境界条件が足りないはずである。
図 7, 8 は、
その
の場合のグラフであるが、
が大きい方が
でのしなり (変動) が大きいと感じる (
軸の目盛りに注意) が、特に問題は見られない。
一方、
の場合は、
(図 9)、
(図 10) も、
での振動が小さくなっているように感じるが、
それほど問題があるようには見えない。
しかし、
をさらに小さくして負の値にすると、
境界条件なしの差分 (31) では解の有界性が崩れて、
どんどん負の方に絶対値が大きくなっていく (図 11)。
これを、同じ
の値に対する境界条件つきの差分 (32) の結果 (図 12) と比較すると、
これもやや変わった感じのグラフではあるが、
安定性という点では境界条件つきの差分 (32) の方がましなように思う。
この不安定性は、本来必要な境界条件が足りないために起きているのであろうが、
この図 11 がそれを明確に表しているのかどうかは、
しかしよくはわからない。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年6月22日