通常年齢別の人口分布は、 図 1 にあるようなグラフで示される。
これは 10 歳毎に区切った棒グラフであるが、 この階級幅を 5 歳毎、1 歳毎のように短くしていけば、 徐々に滑らかなグラフになっていく (図 2)。 ただし、単純に幅を減らすとそれに応じてその範囲の人数も減って しまって高さが 0 になってしまう。 よって、それを横幅で割って 1 歳幅 (10 歳でもよい) あたりの人数に直した 「分布密度」として考える。 これは、ちょうど連続的確率分布の密度関数と似た考え方である。
今、時刻 の単位を年として、整数値ではなく連続的な実数値を考え、
を
年のときの、年齢
歳以上
歳未満の人口とし、
年の
歳の人口分布密度
を
はいわば図 1 の棒グラフ 1 本の人数の
ようなもので、
は図 2 のグラフの高さで、
1 歳幅あたりに直した
歳人口と見ることができる。
この
が 3 節の
に対応する (
は
に、
は
に対応)。
実際の年齢別人口分布では、飢饉や台風などの自然現象、
戦争などの社会的要因などにより は必ずしも
,
,
に関して滑らかでなかったり
不連続であることもあるし、
さらに本来人数
は整数値しか取らないので (30) の極限も厳密には存在しないが、
ここではとりあえず
は
,
,
に関して十分滑らかであり、
(30) の極限も常に存在し、
も滑らかであるとして考えることにする。
また、人口は流入も流出もない閉鎖空間を考え、
増減は生死のみで起こるとする。
年のときの最高齢、すなわち
であるような
の
上限を
とすると、
に対して
となる。
なお、人口分布によっては
の範囲で
が 0 に
なって島状になる場合もありうる (図 3)。
(30) より、
に対して
なので、
十分大きな
に対し
,
(
) とすれば
を、時刻
での
歳人口の 1 年あたりの死亡率とし、
次で定義する。
なお、単純な死亡率
は 0 以上 1 以下の値であるが、
はそれをさらに
で割った極限なので 1 を越える値になりうることに注意する。
は滑らかなので、合成関数の微分により、
なお、ここでは を固定したときに
が
歳の人口分布を
与えるよう考えているが、
微分方程式 (37) の での境界値
は 0 歳人口であり、それは
の分布によって決まる。
今、
を、
年のときの
歳夫婦からの、
歳人口 1 人あたりの出生率とする。
すなわち、
を、
歳以上
歳未満の集団から
年のときの 1 年あたりの子供の出生数とするとき、
を
なお、本来は夫婦の男女の年齢は同じとは限らず、 よって男女それぞれの年齢に応じて出生率を決めるべきであるが、 そうすると人口分布も男女に分けて考えなければならない (連立方程式となる) ので、 ここでは簡単のためほぼ同年の夫婦から子供が生まれるとする。
十分大きな に対し
,
とすると、
初期人口密度分布 と、
死亡率
, 出生率
が与えられたときに
方程式 (37), (41) を解けば、
人口密度分布
の推移がわかることになる。
なお、方程式 (37) の方はさほど難しくはなく、
(39) を用いれば、
これは実質的に に関する常微分方程式なので、
を
と
,
で
表すことができる。
しかし、境界値である出生数
は (41) を
満たさないといけないので、この右辺にその
を代入すると、
に関する
(42) を解いて初めて出生数 が求まり、
そこからようやく
が求まることになる。
よって、
,
,
から
方程式 (37), (41) を
満たす
が決まると思われるが、
を
,
,
の簡単な式で
表わすことはできない。
また、人口分布密度をさらに男女に分けて ,
として、
男女のそれぞれの年齢に対する出生率
(
は男性の年齢、
は女性の年齢) を定めてその方程式を作れば、
これらの方程式については、例えば [2] などを参照のこと。
竹野茂治@新潟工科大学