5 節でも桁落ちが起こらない、引き算を整理した式
電卓を使ってみればわかりますが、
例えば
のときに
を計算するのは
あまり得ではなくて、代わりに
を使えば十分です。
つまり、実際には数式をそのまま計算に使用しているのでなく、
必要な桁数を考えながら近似式を使って計算しています。
この節では、 が大きな
に対して
どのような近似式で近似できるかを考えてみます。
が小さければテイラー展開で済みますが、
今回は
は大きな値なのでそうはいきません。
まず、 の後ろの対数の項ですが、
と思えば
良く知られているように が小さいときは
今度は の最初の項ですが、
これも
と思えば、
このような、大きな に対する関数の展開式を「漸近展開」と呼びます。
実は 5 節の最後の計算ではこの式を用いて
(
以降の項を無視して)、
のような大きな値の場合、
は
程度の小さな値になりますからこれで問題はありません。
数値計算や数式の様子を調べる現場では、テイラー展開だけではなくて、 このような漸近展開も広く使われています。