2 漸近展開とは
[1] によれば、漸近展開の定義は以下のようになる。
定義 1
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(1) |
(右辺は有限和、あるいは無限和) が、
の 漸近展開 であるとは、
各
に対し、
に関して
次の 2 つが成り立つことである。
-
, すなわち、
 |
(2) |
-
, すなわち、
が
に関して有界
この (2) の
の場合は
が
有界であることを意味するが、
の場合を考えると、
は有界で、
は 0 に収束するので、
となり、結局
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(3) |
となる。同様に、(1) の右辺が少なくとも
まで
続いていれば、
が成り立つ。
つまり、
は (3) の意味で
における第 1 近似、
は、
の意味で
における第 2 近似、
といったものを表していることになる。
しかし、特に
が
のときに
無限大に発散してしまう場合は、
テイラー展開などとは異なり、
誤差、すなわち左辺と右辺の差が
のときに小さくなる、
というわけではないことに注意する必要がある。
例えば、
の場合、第 1 近似は
であるが、
これは、
を意味するのであって、
を意味するのではない。実際、この場合は、
となっているから差は小さくはない。
また、
が
のときに有限であっても、
テイラー展開のように、
のようになる、すなわち
として
の
での
テイラー展開を考えればよい、というわけでもないことに注意する。
例えば、
の場合、
のときに
であるが、
とすると、容易にわかるように
の
階微分は、
ある
次の多項式
を用いて、
と書けるから、
となり、よって
の
でのテイラー展開のすべての係数は 0 になってしまう。
また、漸近展開は一意的でないことにも注意する。
例えば上の
の場合、定義からすれば第 1 近似 (
) は
でも
でも構わない。もちろん、より単純な式の方を取るのが普通である。
さらに、漸近展開 (1) の右辺が無限和である場合、
それは収束する級数であるとは限らないことに注意する。
これは、3 節の最後に例を紹介する。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月8日