A. 曲率の回転不変性

この節では補遺として、(10) または (19) によって 与えられる $R$ の回転不変性を示す。 もちろん 3 節や 4 節の議論から それが回転不変性を持つことは明らかなのであるが、 それを式の上で (10), (19) に対して 直接示してみる。

まず、$y=f(x)$ で表される曲線を回転して得られる曲線を考える。 点 $(x,y)$ を原点の周りに $\theta$ 回転した点を $(\bar{x},\bar{y})$ とすると、 それは

$$\left\{\begin{array}{ll} \bar{x} &=x\cos\theta-y\sin\theta,\\ \bar{y} &=x\sin\theta+y\cos\theta \end{array}\right.$$ (21)

となるので、これを $x$, $y$ について解いて、

$$\left\{\begin{array}{ll} x &=\bar{x}\cos\theta+\bar{y}\sin... ... y &=-\bar{x}\sin\theta+\bar{y}\cos\theta \end{array}\right.$$ (22)

とし、これを $y=f(x)$ 代入して得られる $\bar{x}$, $\bar{y}$ の式を $\bar{y}$ について解いて $\bar{y}=g(\bar{x})$ としたものが、 $y=f(x)$ を $\theta$ 回転した曲線の式となる ( $(\bar{x},\bar{y})$ 座標軸上のグラフ)。

$R$ の回転不変性とは、 対応する点に対する $R$ が $f$ でも $g$ でも同じ値になること、すなわち、

$$R^2 =\frac{\{1+(f'(x))^2\}^{3/2}}{(f''(x))^2} =\frac{\{1+(g'(\bar{x}))^2\}^{3/2}}{(g''(\bar{x}))^2}$$ (23)

が成り立つことであり、まずこれを示す (もちろん $g'$ は $\bar{x}$ での微分を意味する)。

上で説明したように、(22) を $y=f(x)$ に代入した式

$$-\bar{x}\sin\theta+\bar{y}\cos\theta =f(\bar{x}\cos\theta+\bar{y}\sin\theta)$$

を $\bar{y}$ について解いたものが $\bar{y}=g(\bar{x})$ なので、

$$-\bar{x}\sin\theta+g(\bar{x})\cos\theta =f(\bar{x}\cos\theta+g(\bar{x})\sin\theta)$$ (24)

となる。この式 (24) を $\bar{x}$ で微分すると、

$$-\sin\theta+g'(\bar{x})\cos\theta =f'(x)(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)$$ (25)

となるから、これにより

$$f'(x)=\frac{-\sin\theta+g'(\bar{x})\cos\theta}% {\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta}$$ (26)

が得られる。(25) を再び $\bar{x}$ で微分すると、

$$g''(\bar{x})\cos\theta = f''(x)(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2+f'(x)g''(\bar{x})\sin\theta$$

となるので、

$$\begin{eqnarray*}\lefteqn{f''(x)(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2} \\ &=& g... ...a} \\ &=& \frac{g''(\bar{x})}{\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta}\end{eqnarray*}$$

より、

$$f''(x)=\frac{g''(\bar{x})}{(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^3}$$ (27)

となる。また、(26) より、

$${1+(f'(x))^2 = 1+\frac{(-\sin\theta+g'(\bar{x})\cos\theta)^2}% {(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2}}$$

$$= \frac{(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2 +(-\sin\theta+g'(\bar{x})\cos\theta)^2}% {(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2}$$

$$= \frac{1+(g'(\bar{x}))^2}{(\cos\theta+g'(\bar{x})\sin\theta)^2}$$ (28)

となるので、(27), (28) より 確かに (23) が成り立つことがわかる。

なお、2 節で $f''$ の値が回転不変ではないと書いたが、 それは (27) からわかる。

次に (19) の回転不変性であるが、これは

$$R =\frac{\{(\dot{x}(a))^2+(\dot{y}(a))^2\}^{3/2}}% {\vert... ...x}}(a)\ddot{\bar{y}}(a)-\dot{\bar{y}}(a)\ddot{\bar{x}}(a)\vert}$$ (29)

ということである。 (22) より、

$$\left\{\begin{array}{ll} x(t) &=\bar{x}(t)\cos\theta+\bar{y... ... &=-\bar{x}(t)\sin\theta+\bar{y}(t)\cos\theta\end{array}\right.$$

であるから、

$$\begin{eqnarray*}\lefteqn{\dot{x}\ddot{y}-\dot{y}\ddot{x}} \\ &=& (\dot{\bar{x... ...bar{y}}\cos\theta)^2 \\ &=& (\dot{\bar{x}})^2+(\dot{\bar{y}})^2\end{eqnarray*}$$

となるから、(29) が成り立つことはすぐにわかる。